囚人たちと読書を

2、3日前、久しぶりに市の図書館に出かけていって1冊だけ借りて帰った。

 

ミキータ・ブロットマン 著 (川添節子・訳) 『刑務所の読書クラブ』 (原書房、2017

 

小説ではない。一種のドキュメントといえる。

 

コンラッドの 『闇の奥』 に始まり、10冊目のナボコフの 『ロリータ』 まで。

 

囚人たちがどのように受け止めた (読んだ) かということは、もちろん興味深いところだが、本当は、そのような交流を通して、著者自身が改めてそれらの作品の根幹に触れることになり、そしておのれ自身が変容するのを観察していたのではないか。

 

そういう予想を、まだ前書きと第1章の初めの方までしか読んでいない私は、立てた。

 

予想はともかくとして、とにかく読み進めたい。

 

 

 

 

 

 

 

ところで、この本の 「はじめに」 を読み始めて少しして、「当番兵」 という語が出てきた。

 その下にカッコがあって、註が入っている。それは

  将校に使えて身辺雑務を担当する

 というもの。

 「使えて」 は 「仕えて」 の誤り。

 こんな分かりやすい誤りさえ見落として活字にしてしまったのかと、失望を覚えた。

 

手抜きがあったかもしれないと思うと、その程度の本なんじゃないかという疑いを抱いてしまう。

 いい本である場合は、惜しいことだ。第1章の次の部分でも、本の形にする以前のチェックがおろそかであったことがうかがえる:

  スリルと興奮を求める気持ちが抑えられなんだよな。

 「抑えられなんだ」 ではなかろうか。私は 「い」 が脱字していると思った。

 方言ぽい言い方をしたんだという可能性は、低いように思われる。

 本当にいい本だから、きちんとした形で出したい、という思いがあったら、こういうエラーは出にくいのではないだろうか。

 

 そして、また目に入ってしまった。

 54ページに

  何の肉だがよく分からないようなミンチ肉の塊に

 とあるが、「何の肉だが」 は 「何の肉だか」 なのだろう。

 まさか方言で語らせているのだとも思えない。

 

あっ、58ページにもおかしな箇所がある。

  闇の魅力にとりかれた者とマーロウを分けたのは

 の 「とりかえた者」 は 「とりつかれた者」 で、「つ」 が脱落しているのだと思われる。

 

第1章だけでも何箇所もこういうのがあるとなると、先を読もうという気持ちに影響しかねない。

 

 p121 の次の部分もひょっとしたら ・・・

  さまざま治療法についても議論した

 は、「さまざま」 とあるべきなのでは?

 

246ページの

  「もう、いいかげんしろよ」

 という部分は、私だったら 「いいかげんに」 と 「に」 を入れただろうなと思う。

 

他には279ページの

 何を隠そうしている?

は 「隠そうと」 だろうし、281ページの

 ハンバート・ンバート役の

という部分にはずっこけた。

『ロリータ』 の語り手の名は、「ハンバート・ンバート」 だ。