公園

私は別なところにもブログを書いていて、一応は書いてみたものの、アップしようかどうしようかと迷って、結局アップしないことにした文章があるのだが、本に関連する内容だから、こちらの方にアップしてみる。

 

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永井荷風・作 「踊子」 に

 

 日曜なんぞは朝の九時から夜の十時まで同じ事を四、五回やるのが公園の例ですから

 

という一節がある。

 

この 「公園」 はどう考えても 「公演」 だろう。

 

岩波文庫版 (2019) からの引用である。2010年の 『荷風全集』 を底本にしているというのだから、「全集」 ではそうなっているのかもしれない。つまり、元がそういう表記だったのだろう (面白いことに、作中には本当に 「公園」 を表している箇所もある)。

 

しかし〔編集付記〕に、文字を改めただの何だのと書いてあるところを見ると、文庫本として、読者が読みやすいように表記に手を加えているようだ。それなのに、「公演」 が 「公園」 となっているのは、どんなもんだろう。オリジナルの表記にこだわるのなら、(漢字はさすがに昔のままでは読みにくいかもしれないけれど) 旧仮名遣いは残せばいい。仮名は書き換えて、漢字は字体を変えただけというのでは片手落ちではなかろうか。

 

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と考えたのだが、荷風の文章には、必ずしも今日の文字使いに合わない書き方をしている場合がある。

 

それなら、「公園」 の場合はどうかといえば、ひょっとしたら、その 「公園」 というのは、「公演」 のことというよりも、レビューなどを上演する建物のある場所のことを指しているとも考えられる。

 

「公園の例」 とは、その地区にある何々館だか何々ホールだかにおいては、そうするのが普通で、珍しいことではない、ということを述べているのかもしれない。

 

その文庫でも、そういう解釈に立って、「公園」 を 「公演」 とは改めなかったとも考えられる。

 

 

 

 

 

上の広告画像に、「作者:荷風、永井」 とあるが、どうも不自然に感じる。

 

なぜ素直に 「作者: 永井荷風」 としないのだろう。

 

たとえば欧米の作家や著作家の書名を表す際に、"James, Henry" のような表記がされることはある。普通は Henry James なのだが、リストなどで著者名順に並べてあるような場合に、ファミリー・ネームを出す場合だ。

 

その方式を永井荷風の場合に当てはめてローマ字書きにしても、Kafu Nagai が "Nagai, Kafu" になるだけである。それが、日本語表示であるのに、「荷風、永井」 とあるのは、いかにも変だと言わざるを得ない。

 

* なお、これは現時点での話で、広告主による修正がなされる可能性はある。