読み通すのに、ほぼ1週間かかった。
ヨルン・リーエル・ホルスト 『猟犬』 (早川書房 [ポケット ミステリ]) である。
これでも、かなり無理して読んだといえる。
私の 「読書」 は、夜、寝床の中で行われるので、日中はあまり読まない。
図書館に返却せねばならないという切迫感があったせいで、それなりに急いで読むことになった。
とはいえ、いい加減な飛ばし読みなどはしていない。
せっかくの出会いであるというのに、そんな読み方をするのは勿体ないではないか。
世の中には、すごい読書家がいて、月に何冊読んでるとか何とかいう人がいるようだが、私はそういう読み方はしたくない。
といって、すべて熟読しているのかといえば、それも当てはまらないだろう。
情報を得るために読むものについては、かなり飛ばすこともある。
必要な部分だけが頭に入ればよいのだから。
けれど、そういうのでなくても、たとえば馴染みのない分野の本を読む場合だと、とりあえず通読する。
内容がよく理解できなくてもいいのだ。
全体の雰囲気をつかむというか、おおよその感じをつかむ。細部は分からなくても気にしない。
それきりになるかもしれないが、それでも構わないのであって、固有名詞とか専門用語とかに触れておくだけでも意味があるとみなす。
そういうのは、読書といえるかどうか分からない。でも、未知の領域に足を踏み入れるようなもので、刺激的ではないか。
などと、一応はもっともらしい書き方をしてみた。
本当は、そんなことはどうでもいい。
読みたければ読めばいいだけのこと。
ホルスト 『猟犬』 について書いてみたいが、もう返却したので手元にない。
北欧のミステリは面白いなと思う。
ジョー・ネスボを読んだ時には驚いたが、あれはあれとして、このホルストもいい。
警察官だった作家である。
自分が知っている領分だから、具体的な記述が豊富だ。
それに、小説の中に出てくる地名は実際の地名だから、街の通りの名とかも実際にあるのかもしれない。
ノルウェーの地図を手元に置いて読むと面白いだろうと思った (作中に出てくる町の位置を示した地図は巻頭に出てはいるけれど)。
スーパーヒーローや頭脳明晰な探偵が出てくるわけではない。
捜査の積み重ねから真相に迫っていくというタイプのものだ。
地味なのに読み飽きない。娘がジャーナリストで、あちこちに飛び回るので、そちらとの兼ね合いがあってバランスが取れているともいえる (それは訳者も述べていた)。
第8作目だそうだから、ひょっとすると、あの娘のかつての恋人とかも過去の作品に登場してたのかもしれないから、いきなり登場しても、前の作品を読んでる人には唐突感はないのかもしれない。
それに、あの中年の警察官といっしょに住んでいる女性との関係も、その後どうなったのかは書かれていないのが気になったりする (別居することになりそうな雰囲気だった)。第9作にも登場してるのかもしれないな。
原題は Yakthundene という。hundene はドイツ語の hund に相当し、hundene は英語なら the dogs だ。