何日か前にフェルディナント・フォン・シーラッハ 『刑罰』 (東京創元社、2019) を読んで、その中には完全犯罪になったものもあったように思う (疑惑は持たれたものの、結局は犯罪者とされずにすんでいる人たちは、何人か登場したように思う)。
そういえば、今年の夏に読んだ陳浩基 『ディオゲネス変奏曲』 (ハヤカワ・ミステリ、2019) にも、完全犯罪をなし終えた者の話はあったな、と思いだす。
どちらも短編集だった。
今日、道を歩いてて、ふと頭に浮かんだのだが、あの D. H. Lawrence の The Fox も、あれも考えてみれば完全犯罪だ。
文学者の作品なので、そういう視点から意識しなかったが、ストーリーの上ではそういうことになる。
ご丁寧に証人とならせる者たちを招いて、彼らを目撃者にして、偶然の事故と見せかけることに成功しているのだ。
D. H. Lawrence の長編はいくつかあるが、楽しんで読めるようなものはなさそうだ (私は彼の長編は読んだことがない)。
ただ、The Fox は長編ではないし、かといって短編と呼ぶには少し長いくらいのもので、ストーリーがはっきりしているので読みやすかった記憶がある。
原文で読んでも、さほどむつかしくない。高校生くらいの読解力があれば読める程度の英語である。
いつか読み返す日が来るかもしれないと思っていたが、今日に至るまで、まだ再読していない。
それでも、それなりに記憶が残っているということは、あまり複雑な内容ではないし、ストーリーも錯綜してはいないし、読みやすい英語だったし、という要因があったせいだろう。
D. H. Lawrence といえば Lady Chatteley's Lover と並んでよく知られているのが Sons and Lovers だろうが、私は読み通したことはないが、終わりの方だけちょっと知っている。
あれも一種の完全犯罪といえないでもないかも。母親殺しだ。
まぁ、安楽死させたわけだが、今日の日本であんなことをしたら殺人罪を問われるだろうな。